三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

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ポイズンドーター・ホーリーマザー 湊かなえ

ポイズンドーター・ホーリーマザー

久々の湊かなえさん。
「告白」で話題をさらってから9年。
コンスタントに作品を発表され、今では押しも押されぬベストセラー作家の一人となられましたね。
ご本人をテレビで拝見したことがありますが、あんな可愛い顔と声の女性がこんなえげつないお話を・・と驚きました。

今「リバース」という作品が話題のようで、ドラマ化もされていますね。
時々私がおやつに買うランチパックにも、タイアップなのかビニール包装に「リバース」の番宣が印刷されているものがありました。
美味しそうに見えたので、一つ買って帰りますと、夫がそれを見て・・・「ゲロ・・???」とのたまいました。
ゲ、ゲロ・・・・・。
ランチパックに、ゲロ。。。
夫よ。それ、和製英語らしいよ。

どうでもいい話は切り上げまして。
「ポイズンドーター・ホーリーマザー」
湊さんの毒がピリリと効いた短編集で、毒親、毒娘をテーマにした表題作はラストの2編です。

毒親という俗語が有名になったのは、ごく最近ではないかと思います。
毒親の形は様々でしょうが、要は子供のためと思ってやっていることが、過干渉なのか束縛が過ぎるのか、結果的に子供の自立性や将来性をつぶしてしまうような親のことでしょう。

「ポイズンドーター」は娘弓香の視点で、毒親である母のことが語られ、「ホーリーマザー」では弓香の友人理穂の視点から弓香とその母が語られます。
理穂はマスコミに「毒親」として晒された弓香の母は立派な母親であり、弓香こそが毒娘であると糾弾します。
本当の毒親は、中学生の娘に売春させて飲んだくれてた、同級生マリアの母のような人のことだと。

理穂のいうことも分かるけれど、弓香の気持ちも分からないではないです。
マスコミに母親を晒したのは確かに頂けないし、弓香に自分の人生が思うようにいかないことをひとのせいにするきらいがあるのも否めませんが、彼女にとっては母親は愛情で娘の羽をもぎ取るような、支配的な親だったんでしょう。
人間は多面体で、それが母親の全ての顔ではないというだけです。

毒親、とは何でしょう。
私にはよくわからない。でも、「毒親」には自分が毒親だという自覚はないのではないでしょうか。
自分は子供を愛している、と自分では思っているのではないでしょうか。

理穂が名前を出した、マリアの母。
育児放棄し、あまつさえ中学生の娘に売春させるような母親。
母性の欠片もない、最低の母親。
こんな女は毒親などという範疇を越えています。ただの虐待母、犯罪者です。
なぜ周囲はマリアを助けなかったのか。
現実ならば、中学校や教育委員会など行政が、マリアを保護するべきではないのでしょうか。
ここのところ、フィクションだからと自分に言い聞かせても、非常に憤りを覚えました。

そして出来れば弓香の視点に対する最後の章は、友人の理穂ではなく、母親の視点で語って欲しかったです。
私は理穂にあまり共感できませんでした。
理穂はただ周りの状況に流され、その流れに逆らわず環境を受け入れている、主体性のない人に思えました。
特に気になったのは、「中学もろくに行っていないマリアを、父親が採用したのはなぜだろう」と思いつつも、そこを深く考えないようにするところ。
いえいえ、ここで思考停止してはだめでしょう。
理穂は不都合な事実から逃げ回り、目をつぶっている。そして自分は幸福だと思い込んでいるのです。
理穂に弓香を糾弾する資格はありません。

私には理穂こそ「毒親」の予備軍に思えました。

六編の短編の中では、嫉妬に苦しむ脚本家のお話の「ベストフレンド」が一番面白かったです。
ハッピーエンドではないのに、後味が良かった。



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「水やりはいつも深夜だけど」  窪美澄

思い通りにならない毎日、言葉にできない本音。
それでも、一緒に歩んでいく――だって、家族だから。

『ふがいない僕は空を見た』の実力派が、ごく普通の家庭の生々しい現実を強烈にえ
ぐり出した、珠玉の連作集。


セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。

同じ幼稚園に子どもを通わせる家々の、
もがきながらも前を向いて生きる姿を描いた、魂ゆさぶる5つの物語。
(アマゾンの紹介文より)

デビュー作の「ふがいない僕は空を見た」がベストセラーになり、映画化もされたせいで(?)、今でも「ふがいない~」の作者の~と、言われ続けている窪美澄さん。

「ふがいない僕は空を見た」も面白い作品でしたが、性描写の激しさは好みの分かれるところだったと思います。

この「水やりはいつも深夜だけど」は、家族をテーマにした短編集です。性描写はありません。
どなたにも自信を持ってお勧めできます。
今まで読んできた窪美澄作品の中で、私は一番好きです。

5編の短編の中では、「サボテンの咆哮」、「ゲンノショウコ」がお気に入りです。

「サボテンの咆哮」では、息子と共に、一人暮らしをしている老父の元を訪ねる場面がしみじみと良い。
うたた寝している主人公の夢に亡くなった母親が現れ、主人公に語りかけるところ、今思いだすだけでも涙が滲んでしまいます。

(以下引用)
「お父さん、言葉は少ないけれど、お母さん、お父さんの言いたいことはわかるのよ。やさしい言葉をかけられたって、態度がそうじゃなかったら、何だか悲しいじゃない。お父さんはね、やさしい人よ。私がそう思っているんだからいいじゃないの」
(引用終わり)

主人公武博が昔から煙たがっていた無口な老父が、孫の章博に語りかける場面もいいです。
一人で寂しくないの?と祖父に問う孫にたいして、(以下引用)
「(おばあちゃんは)ここにはいないけど、おばあちゃんと暮らした家だからな、ここは。・・・一度なかよくなった家族は離れないほうがいいんだよ。章博だって、お父さんとお母さんとずっといっしょだろ」
「お母さんはお父さんと章博の世話をして、お父さんはお母さんと章博のために、一生懸命働いているんだものなあ・・・。そんなこと、誰にでもできるようで、誰にでもできることじゃないんだ。章博のお父さんはなあ、偉いんだぞ」(引用終わり)

「ゲンノショウコ」も見事な短編。
主人公美幸は娘の発達を気にしています。他の子と比べ、うちの子は少しおかしいのではないか、と。
一人っ子で子育て慣れしない完璧主義のお母さんなのかと思いきや、美幸には障害のある妹、彩がいたことが語られます。
子どものころ美幸と彩は線路に耳をあてる遊びをします。
「遠くに行くんだよ。ずっとずっと遠くに。一緒に行こうね」

この先を書いてしまってはネタばれというか、読んでいない方の興を削いでしまうので書けませんが、「ゲンノショウコ」を読んでいると、雲の中から一条の光がさす広い空のなか、どこまでも伸びていく線路を辿って歩く彩の絵が頭に浮かびます。
そしてまたじんわりと涙ぐんでしまいます。

最後の短編。父の再婚によりやってきた義母に戸惑う高校生を描いた「かそけきサンカヨウ」
5編のなかで一番見事な短編小説だと思います。

しかし、リアルで辛いのです。
良い友達がいる。父は穏やか。新しい継母も優しい。新しい妹は怪獣のようだけど可愛い。
決して不幸な生い立ちではありません。でも読んでいて辛い。
子どもの賢さが、かえって悲しい。

瀧澤美恵子の「ネコババのいる町で」を思い出しました。

「ネコババ~」では主人公が会ったことのない実父に会いに行く場面があります。

「サンカヨウ」の主人公、陽もまた、かすかに古い記憶に残る母に会いに行こうとします。

しかし、実母は彼女に気が付きません。
この実母の描写が、また容赦ない。
再婚していて、子どももいるらしい母。

(以下引用)スーパーマーケットの茶色い紙袋を提げた小さなおばさんのような人が、中に入ってきた。短い髪の毛には、だいぶ、白いものが交じっている。黒い丈の長いワンピースを着て、真夏なのに、黒いタイツをはいていた(引用終わり)
微かに残る母の記憶、変わらない記憶、ともすると美化されがちな記憶を、木端微塵に粉砕するような、現実の残酷さ。

実母が成長した陽に気が付かなかったように、母も年を重ねている。
そして離れて過ごした時間に、娘の陽は存在しない。
離れて暮らした人間は例え肉親でも、もはや同じ空気をまとっていない。

実母は陽の思っていたような女性ではなかった。

高校一年の女の子が受け止めるには、あまりに辛い現実です。

父親が陽の頭をなで、「大人にみたいにならないといけなくしてしまったのかもぼくが」と、つぶやく場面は心に響きます。

陽の周りに悪い人はいません。優しい人達ばかりなのだけれども、それがこの少女の寂しさをリアルに感じさせられます。


全編最後には、雲の中から光が差し込むかのような、救いのある終わりになっています。
能天気なハッピーエンドではないところが、またリアルです。

この5編はそれぞれ独立した短編ですけれど、同じ幼稚園に通っている園児がいる、という共通項があります。
そしてタイトルは全て植物の名前。
花弁が透明に透き通るというサンカヨウ、ぜひ実物を見てみたいです。

水やりはいつも深夜だけど水やりはいつも深夜だけど
(2014/11/14)
窪 美澄

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「よるのふくらみ」 窪美澄

その体温が、凍った心を溶かしていく。29歳のみひろは、同じ商店街で育った幼なじみの圭祐と一緒に暮らして2年になる。もうずっと、セックスをしていない。焦燥感で開いた心の穴に、圭祐の弟の裕太が突然飛び込んできて……。『ふがいない僕は空を見た』の感動再び! オトナ思春期な三人の複雑な気持ちが行き違う、エンタメ界最注目の作家が贈る切ない恋愛長篇。
(アマゾンの紹介文より)

窪美澄さんは、相変わらず巧い。
ごく平凡で、ちょっとカッコ悪い人間を描いたら、今右に出る者はいないのではないでしょうか。
読後感が悪くないところも良いです。

みひろと婚約者の圭祐と、その弟の祐太の三人の視点からの短編が交互に綴られています。

兄弟二人がみひろという幼馴染を恋い慕う設定は、漫画の「タッチ」を連想してしまいました。
お兄ちゃんが報われないところも。

私はみひろと裕太にはあまり共感できませんでした。

特に裕太。
子どもの頃にみひろの母親が若い男と出奔したことで、同級生の健司に「お前の母親いんらんおんな」と苛めを受けます。
この時お兄ちゃんの圭祐は激怒して健司を殴り飛ばします。
(圭祐がこの時、父親の愛人マリアさんに惹かれていたこと、健司の父親も愛人を作って家庭がごたごたしていたことが裏事情としてあるのですが)
健司の親友の祐太は、圭祐に対して「何であんなことをしたんだ」と怒ります。
圭祐は答えます「みひろが苛められているからに決まっているだろ」と。
裕太は、ハッとします。

裕太。ここで健司を止めるべきだったのは、あなただよね。
子どもの頃からみひろが好きだったなら、親友の健司がみひろを傷つけているには分かっていたよね。
なんであなたが健司を殴らなかった、殴りはしないまでも、止めなかったの。

ここがちょっと引っかかりました。

この三人は等身大の人間で、みんな欠点があります。
こういう至らなさが、裕太の欠点なのでしょう。

やや寂れた商店街の中で育った主人公たちの行動は、大人になっても周囲の人たちに筒抜けです。

みひろの母親が一時期出奔していたことをみんな知っている、というのはまだましな方で、裕太と結婚を考えている子持ちの女性がパチンコ中毒らしいことや、極めつけはみひろと圭祐が不妊治療をしていることも、圭祐の方に問題があることも筒抜けなのです。

下町気質なのはいいけれど、このプライバシーのなさは嫌だなあ。
みんなもっと外に出てみようと思わないのかな。

と、思っていたら、最後の章で圭祐は逃げるように大阪に単身赴任します。

長子気質で優等生の圭祐ですが、彼にもまた欠点はあります。
でも、私は報われない圭祐に肩入れしてしまいました。
彼の再生を願いつつ読み進めたので、新しい出会いと光明が見えるラストにはホッとしました。
少々安易とも思えますが、幸せな結末が嬉しかったです。

脇役も際立っていました。

圭祐の父親の愛人、マリアさんの言葉
「だれにも遠慮はいらないの。なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ」

この言葉を大人になってからも圭祐は思い出します。
そしてその言葉の通りの行動をとります。
「裕太、おめでとう」と。

ここでの圭祐はとても格好いいです。

あと、一番私の心に響いたのは、脇役の一人、川島さんの言葉です。

川島さんの奥さんは部屋をめちゃめちゃに荒らして出て行ってしまい、彼は仕事三昧他の時間はお酒三昧で徐々にボロボロになっていきます。
不動産屋に勤める裕太は、大家さんに頼まれてこの川島さんの世話を焼く羽目になるのですが・・。
体を壊して入院している川島さんは、裕太にこんな言葉を残します。

「一生のうち、ほんとに好きになれるやつなんて、そう何人もいないんだぜ。出会えない奴もいる。出会えただけで幸運だ。女のわがままなんて、かわいいもんだって。私を大事にしてくれ、って、あいつらのいいたいことはそれだけなんだから」

この一週間後に、川島さんは亡くなります。

かっこいいなあ、川島さん。出番は少ないけれど、この作品で一番心に残りました。

よるのふくらみよるのふくらみ
(2014/02/21)
窪 美澄

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「無花果の森」 小池真理子

夫の暴力に耐え切れなくなった新谷泉は、家を飛び出した。隠れ場所を捜し、ごくありふれた地方都市に降り立った彼女は、狷介な高齢の女性画家に家政婦として雇われることになる。
降り続く雨のなか、時間だけが静かに流れゆく日々を過ごす泉は、思いがけない人物と出会う・・。
追いつめられ、全てを失った男女の愛と再生の物語。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
(文庫版のあらすじより)

もともと私はあまり恋愛小説を読まないのですが、小池真理子さんの小説だけは昔から愛読しておりました。
「欲望」や「恋」はお気に入りの小説です。

しかし何故か年をとるごとに、しんどさを感じるようになり、「水の翼」「冬の伽藍」あたりは読み終えるとぐったりするようになってしまいました。

しばらく小池作品から遠ざかっておりましたが、書店で見かけたこの本の、黒地に浮かび上がる鮮やかな四つの無花果、というシンプルな表紙に惹かれ、久々に小池真理子さんの文庫を購入しました。
何年ぶりかの小池作品との再会です。

家庭内暴力がテーマなのかと思いきや、主人公と塚本の間に育まれる愛と、逆境からの再生の物語でした。
最後まで静かなトーンで、大きな出来事はあまり起こりません。
あくまで泉の心情の、微かな動きを捉え、粛々と物語が進みます。
後味は決して悪くありません。

脇を飾る女性画家八重子がとても魅力的で、彼女の物語をもっと知りたいと思いました。

あと、何より夫の新谷吉彦。彼の側からの描写も欲しかった。
妻に対して執拗な暴力を繰り返した男の心情やいかに。
いつか夫からの攻撃があるに違いないと、ハラハラしながら読み進めましたが、案外あっけなく引き下がったのに拍子抜けしました。

ファンには申し訳ありませんが、私は新谷に、劇作家の井上ひさしを重ねていました。
「ひょっこりひょうたん島」等々、庶民に愛されるヒット作を連発した天才ですが、癇性な性格で陰では妻を顔が変形するほどボコボコに殴っていたという。
スタッフもそれを知っていて「奥さん、殴られて下さい」と容認していたと。
天才と●●は紙一重なのか。

生贄にされる側はたまったものではありません。

閑話休題。

この作品、帯によると、映画化されたんですね。
DVDが出たら、観てみようかな。

無花果の森 (新潮文庫)無花果の森 (新潮文庫)
(2014/04/28)
小池 真理子

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「リカ」 五十嵐貴久

リカ (幻冬舎文庫)リカ (幻冬舎文庫)
(2003/10/10)
五十嵐 貴久

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妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。
(アマゾン紹介文より)

怖い怖いと噂の本書。
とうとう読みました。
読み出したら止まりませんでした。

私が女だからなのもあるでしょうが、前半の展開は愉快でしょうがなかったです。
家庭がありながら出会い系サイトでお手軽な遊び相手を見つけようなどという不届き者は、痛い目にあって当然なのです
ホラーコメディかと思って読んでいました。

が・・、後半から笑える展開ではなくなりました・・(汗
リカよ。子供には手を出すな。

この女の目的は無論、正体がよくわからないところが怖さを倍増させます。
主人公が彼女に何かしたわけでもないのに、徹底的に追い回されて生活を破壊される理不尽。

望月峯太郎の「座敷女」にもよく似ていますね。あれも怖かったなあ。。

ところで、なんでリカは臭いんだろう・・?

あと本筋とは関係ありませんが、主人公の娘もその同級生も、小学校一年にしては幼いかな?
小学一年の、まして女の子はもっとしっかりとお話しすると思います。

続編もあるらしいですね。。
リカは結局この後どうなったんだろう。
気になるから探してみようかな。




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