三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

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ヘタリア劇場版

息子と池袋へ、「ヘタリア劇場版」を観にいってきましたよ。

良い評判を聞いていなかったので、まったく期待せずに観たのが返って良かったのか、結構楽しめました。

でも昨日BSの再放送で観たのと、まったく同じネタが出てきたのにはびっくり。

帰り際、他の観客が

「お金かけてないなあ・・」と呟いていました

それでも、小さな箱ではありましたが、公開からずいぶん経つのによく入っているようです。

良い商売してるなあ

パンフレットは、豪華版と通常版の二種類があったそうなのですが(何故に??)もはやどちらとも売切れでした。


しかし、池袋って、何かガラが悪いなあ。。

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のはらひめ なかがわちひろ作

5歳の末娘は、ボーイッシュな姉と違って、「乙女」です。

フリルのついたピンクや赤の服でないと、頑として着たがらず、外で遊ぶよりも家で出来る人形遊びやお絵かきが好きです。

絵本も「王子様」だの「お姫様」が出てきて、最終的に幸せな結婚をしました、というお話だと、目を輝かせて、何度も何度も読んでとせがまれます。

「シンデレラ」だの「眠れる森の美女」だの「おやゆびひめ」だの「しらゆきひめ」だの、もう本を見ずに読み聞かせ出来るほど、何度も読まされました。

長女はこの手の絵本にはまるで興味なし。こどものかがくのほんだと目を輝かすのですが・・・、同じ親から生まれてきた年子姉妹なのに、不思議です。この、もって生まれた個性の違い。


先日図書館で、「のはらひめ」という絵本を見つけました。
絵も可愛く、主人公は「マリちゃん」という名前。
末娘と同じです。

古典的な「おひめさまもの」は読みつくしてしまったし、これならもしかしてマリコも気に入るのではないかと、借りてきました。

おひめさまになりたい、なりたいと願っていたマリちゃんのもとに、ある日金色の馬車が現れます。
「おむかえにあがりました。あなたこそすばらしいおひめさまになられるかたです」

マリちゃんは沢山のドレスや着物の中から自分の好きなドレスを選ばせてもらい、沢山の侍女にお世話をしてもらいます。

ここまではうちのマリちゃんも目を輝かせて絵本を見つめていました。

ここから絵本のマリちゃんは、おひめさまになるための修行をさせられます。

上品な笑い方。

上品な食べ方(お箸、ナイフとフォーク・手づかみ等世界各国の食事マナー)

上品な寝かた(お布団の下の豆粒に気がつかなくてはだめ)

どの国の王子様ともお話できるように、いろんな国の言語が話せなくては駄目。

どの国の王子様が一番大きいか、一番お金持ちかが分かるように、世界地図や算数のお勉強もできなくては駄目。

もしかしてカエルが王子様に化けているかもしれないから、本物を見分ける訓練も大切。

プロポーズをお断りするときにはとけるはずの無い問題をだせば、すべてまるくおさまるはずだから、なぞなぞや問題を山ほど覚えておかなければいけない。


極めつけは、竜ややまたのおろちといった怪物が襲ってきたとき。
危機のときに王子様が助けに来てくれるとは限らない。誰も来なかったら一人で何とかするしかない、と、マリちゃんは戦いの修行もさせられます。

全ての修行が終わり、マリちゃんは晴れて「おひめさま」になる資格を得ます。

「あなたさまなら どんなおひめさまにも おなりになれますよ。
 さあこのなかから、すきなおひめさまをおえらびください」

紙には歴代の有名お姫様(シンデレラ・おとひめ・おりひめ・いばらひめ・かぐやひめ・・・)の名前が並んでいます。

マリちゃんはしばらく考え込んだ挙句、「のはらひめ」と署名し、呆気に取られるみんなに手を振って、「おひめさま城」を去り、もとの自分の世界の、おうちの前の野原に戻るのでした。


この絵本はつまり、古典的お姫様の底に隠された、計算高さ、いやらしさを暴いたお話なのでした。

これではまるで、アラサー女の婚活のようではないですか。
(もののたとえです。30前後の方、どうか気を悪くなさりませんように

これは「百万回いきたねこ」と同じく、実は大人向けで、子供にはよく意味が分からないのではないか?と案じたのですが、

果たして、うちのマリコちゃん。

「これ、きらい。」

と、二、三度読んだだけで、もう開こうとはしませんでした。

「お姫様願望」に潜む媚びた嫌らしさに、彼女は本能的に気がついたのかどうか?


乙女マリコよ。

計算姫でもいい。

たくましく生きよ。

のはらひめ―おひめさま城のひみつのはらひめ―おひめさま城のひみつ
(1995/05)
中川 千尋

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鱗姫 嶽本野ばら

図書館で本を借りる時は、出来るだけ読んだことの無い作家さんの作品を選ぶようにしています。

もちろんこれは私には無理だなあ、受け付けないなあ、と思う本も多いのですが、自分の好みの作品に当たった時の喜びは大きいです。


嶽本野ばらさん。

映画「下妻物語」の原作者という程度しか、私は知りませんでした。
「下妻物語」は大好きな映画だったので、何の予備知識も無くこの本を手に取りました。

京都の名門、龍烏家の長女・楼子は、奇跡的に美しい肌と美貌を誇っていた。一年中日傘を手放さず、人一倍美肌に固執していた楼子には、しかし重大な秘密があった。初潮をむかえた十一の歳、性器の周囲に生えはじめた鱗が、歳月とともに範囲を拡げていたのである。楼子の様子に不審を抱いた叔母の黎子は、ある日、自分にも同じ鱗があること、それが龍烏家の女子に伝わる奇病であることを明かす。忌まわしき「鱗病」を伝える龍烏家の秘密とは? 全身へと拡がる鱗の恐怖と、美貌を失い、最愛の兄が離れてゆく絶望に脅える楼子は鱗病を抑える唯一の治療法を見つけるが、それはあまりにも凄惨な方法だった! 人の執念の悲しさを前代未聞の設定で描いた、ファン待望の第二作。

(アマゾンの紹介文より)

何ともシュールなお話です。
はじめはカフカの「変身」を連想したのですが、元々誇り高き絶世の美女である楼子もその叔母も、決してグレゴール・ザムザのような哀しい運命は辿りません。


美しさこそ全てであった誇り高い主人公の叔母、黎子が鱗病の閉鎖病棟で、主人公に語りかける場面は、とても印象的でした。

(引用はじめ)

私は世界の有象無象の中から、美しいものだけを選択し、大切にし、今まで生きてきた。
だから、皆、私達を嫌悪すればいいのだわ。先ずは差別すればいい。
醜悪なものを醜悪なものとして、差別すればいい。それが内面に関することでも外面に関することでも、どちらでも同じこと。美しいものを美しいと素直に感じるように、醜いものを素直に醜いと感じればいい。

 現代を私が嫌悪し続けるのはね、醜いものを醜いという感覚を拘束し、体面で糊塗することが人間らしさだとされる時代だからなの。

(中略)
醜悪なものを現代のヒューマニズムは、醜悪だといわない。醜悪なものを醜悪だということはヒューマニズムに反することだとされる。悪だとされる。
現代のヒューマニズムにおける正義は、醜悪なもの、異形なものに一見、優しい。

でも優しさなんて何の役にも立ちはしない。理解できないものを理解しなければいけない時、人間は苦肉の策として優しさを持ち出すのよ。真に理解していれば、相手を認めていれば人は人に優しくなんてなくていい。残酷でいられる筈なのよ。

安易な理性によって私達にヒューマニズムが与えるものは同情のみ。同情なんていらないわ。

同情するくらいならきっぱりと差別してくれればいいのよ。差別をされたものは差別をされたものとしてのアイデンティティを築くことが出来る。

(引用終わり)

この魅力的な叔母様の独白。
自分の心に長く刻んでおきたくて、ここに長々と書き出してしまいました。


底に隠された悪意や嫌悪感を、見せ掛けだけの優しさでオブラートする現代の偽善を、ここまで容赦なく切り捨てる作者の筆力には舌を巻きます。

そして叔母様の徹底した誇り高さに憧れます。

「鱗姫」のお話の顛末自体は、そう意外性はなかったのですが、この叔母様黎子の存在がとにかく際立っていました。


この本の次に、「シシリエンヌ」を読んだのですが、こちらはかなり官能的な作品でした


でも、たとえ異形なものとなっても、人の同情は受けず、常に誇り高く、というテーマは、この作品にも通じていました。

しかし、嶽本野ばらさん。

著者近影を拝見しましたが、男の方なのか女の方なのか、全然分かりません

でもとても綺麗な方ですね。

鱗姫―uloco hime鱗姫―uloco hime
(2001/03)
嶽本 野ばら

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五歳児のお絵かき

5歳の末っ子は、やたらとお絵かきが好きです。
暇さえあれば、そこらへんにある紙の余白に絵を描いています。

時折りそれは一ページずつの、物語形式になっていることもあります。
パラパラ漫画の大雑把なものというか。

近頃はパソコンを使ってお絵かきをしています。

本当はこんな小さい子にパソコンなんて触らせたくなかったのですが、お兄ちゃんがパソコンで遊んでいるのを見て、自然に覚えてしまったようです。

近頃の子は、こんなことはすぐに覚えるんですね~。

などと親が他人事のように言ってはいけないんですが


この間末娘の描いた絵の中で、ちょっと目を引くものがありました。

mari.jpg

末娘に「これ、何を描いたの?」と聞くと

「落っこちていくお姫様」

・・・・

転落していくお姫様。

何か、哲学的だなあ。。

もちろん、娘はな~んも考えずに描いたのでしょうが。







ヘタリア

イタリアはじめヨーロッパ諸国を擬人化した漫画、ヘタリア。

もはや説明不要の大人気漫画ですが、今さらながら嵌っています。


私ではありません。


中学二年の息子が、です。


中年になっても根っから漫画好きの私は、「漫画なんか読むな」などという無粋なことは言いません。

むしろ漫画でも何でもいいから、浴びるように本は読んで欲しいです。


手前勝手な教育論はここまでとして、


ヘタリア。

そりゃデフォルメ過多ではありますが、あの史実をネタにこうくるか~、という歴史好きのツボを押さえていて、面白いです。

息子と一緒に語り合える漫画が出来たことも嬉しかったり


次の土日に息子と映画を観にいこうと思っているのですが、ヤフーのユーザーレビューを見ると、なんだか散々な出来のようですね。。

どうしようかなあ。

ヘタリア〈3〉Axis Powers (BIRZ EXTRA)ヘタリア〈3〉Axis Powers (BIRZ EXTRA)
(2010/05)
日丸屋 秀和

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マイシャワーが欲しい。

暑い。

東京の夏は蒸し暑すぎます。

実家のある栃木もそりゃ夏は暑いですが、東京の暑さは何か違うのです。

ねっとりした不快な暑さ。

生理的に嫌な暑さ。

大量のエアコンから排出される熱風の作り出す、人工的な暑さです。

嫌だ。

一年でもっとも苦手な季節です。


もともとデ・・・いえ、ふくよかな私は、朝から大汗をかいています。

幼稚園の送り迎えのたびに、くらくらめまいがするほど汗をかきます。


こういうときは、シャワーを浴びたい。

もともとお風呂が大好きな私。

たとえ真水でもいいから、頭からザバッと。


ところが同居の哀しさかな。

嫁の私には、自由な時間にお風呂に入るというのが出来ません。

かまわず一言断って、入ればいいのでしょうが、お風呂のある場所が、姑の部屋と舅姑の居間の間なので、かなりの勇気を要します。

舅も姑もそんな意地の悪い人たちではないし、私も三人の子の母として、もはやこの婚家に根を生やす身。

遠慮することは無いのでしょうが・・・遠慮しちゃうんだなあ。。


しかし汗みずくの身体を放置すると、自分でも分かるぐらい汗臭くなるので、洗面所で一生懸命濡れタオルで身体を拭いて、制汗デオドラントスプレーかけてます。


夫は気兼ねなく、朝風呂すればいいじゃん、と言うんですけどね。。


親とずっと一緒に住んでいる人は、簡単に言うよな


たとえ寝台車に申し訳程度についているような、小さな小さなシャワー室でもいい。

気兼ねなく使えるミニお風呂が欲しいですよ。



またもや蜂の巣

うちのベランダに、またもやアシナガ蜂が巣を作っていました。

hati.jpg


ベランダに巣を作られるのは、もうこれで三度目。

アシナガくんにとって、ここはよほど居心地が良いのでしょうか。

しかし、至近距離でアシナガくんにブンブンされながら洗濯物を干すのはもうごめんなので、巣のまだ小さいうちに、撤去。

蜂の目の見えない夜に、巣に殺虫剤を吹きつけ、翌朝巣をとりはずしました。

ふと下を見ると、幼虫の死骸がぼとぼとと落ちていました。。


ごめんね。

でももううちには巣を作らないでね。


5・6・7月前半読了本

近頃は日常生活の悩みから逃避するように、本やら漫画やらを貪り読んでいます。

でも、本を買える金銭的な余裕(極貧だった昔に比べて、ですが)や、読書についやせる時間があること自体、幸せなことだと思わねばいけないのかもしれません。

5月から今まで、読んだ本を忘れてまた借りたり買ったりしないように、列挙しておきます。

時に面白かったものには印を。


「転落」 永嶋恵美

「告白」港かなえ

「悪人」吉田修一

「眠れる美女」川端康成

「あなたがほしい」安達千夏

「ナチュラル・ウーマン」松浦理英子

「ケッヘル」中山可穂

「カナリヤは眠れない」近藤史恵

「桜姫」近藤史恵

「タルト・タタンの夢」近藤史恵

「わたしが・棄てた・女」遠藤周作

「エロ事師たち」野坂昭如

「鱗姫」嶽本のばら

「シシリエンヌ」嶽本のばら

「ハルカ・エイティ」姫野カオルコ

「受難」姫野カオルコ


改めてみると、艶っぽい本が多いな

傑作という評判を耳にしつつも未読だった野坂昭如「エロ事師たち」は図書館で借りましたが、表紙が凄くて・・・、館員さんの目が心なしか鋭かったような気がします
エッチな小説が氾濫している昨今、別にどうってことなかったですよ。そういう意味では。


jetさんお勧めの近藤史恵さん、無駄の無い簡潔な文章と、物語に読者を引き込む筆力が素晴らしいです。

他にも何冊か文庫を買い集めましたので、夏休み中読むのが楽しみです。

芥川賞・直木賞

芥川賞と直木賞が昨日決まったようですね。

芥川賞は新人に贈られる賞なので、候補作の作家さんに私の知っている名前はひとつもありませんでした。

芥川賞受賞作は毎回文芸春秋に掲載されるので、たまに私も受賞作を読むのですが、俗な本読みの私には

「だから、何なの?」と言いたくなるようなよく分からない話が多いです


高尚な文学の分からない私が関心を持っているのは、やはり直木賞。

今回の候補作は

乾 ルカ『あの日にかえりたい』(実業之日本社)
冲方 丁『天地明察』(角川書店)
中島京子『小さいおうち』(文藝春秋)
姫野カオルコ『リアル・シンデレラ』(光文社)
万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(筑摩書房)
道尾秀介『光媒の花』(集英社)

と、皆さん今をときめく人気作家の作品ばかりなので、一体どなたが受賞されるのだろうと楽しみにしてました。

結局、中島京子さんが受賞されましたが、この中のどなたが受賞されてもおかしくなかったと思います。

個人的に私は姫野カオルコさんに今度こそ受賞して欲しかったです。

姫野さんは一体何度候補作に挙がったことか。

まるで、女東野圭吾ですよ。

リアル・シンデレラリアル・シンデレラ
(2010/03/19)
姫野 カオルコ

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ケッヘル 中山可穂

伽椰は海峡の町で出会った男、遠松鍵人に職を斡旋される。モーツァルトの音楽に取り憑かれた男と、過去の亡霊から逃げ続ける女。出会うはずのない2人の人生が交差した瞬間、狂おしい復讐の幕が上がる。
(アマゾンの商品説明より)

中山可穂作品はほぼ読んでいるのですが、本作は上下巻1000ページという大長編なので、なかなか手を出せずにいました。
が、本日ようやく読了。

夫の上司の妻と身を焦がすような激しい恋に落ち、冷酷な恋人の夫に追われて異国に逃亡し、三年の間彷徨う木村伽耶。

片や風変わりで優雅な、 モーツァルト狂の遠松鍵人。

まるで接点のなさそうなこの二人の主人公の出会いから、物語は始まります。

遠松鍵人は日本に居場所の無い伽耶に、鎌倉の自宅のアパートを貸し、自身が社長を勤める風変わりな旅行社「アマデウス旅行社」に就職をさせてくれます。

ところが伽耶が世話をした旅行客が、旅先で自殺するという事件が起き・・。


一章ごとに物語は伽耶の視点、鍵人の視点に変わり、進められていきます。

上巻はどちらの物語も面白くて、章が切り替わるごとにもっと先を知りたくてがっかりしたほどです。
この二人の物語はどこで交差するのか、わくわくしながら読んでいました。

下巻に入り、あの男が二人にとって共通の敵でだったのか、と気づくと、ある程度物語の先は読めてきましたが、それでもやはり中山可穂さんの筆力は凄いので、「嫌な展開だなあ」と思いつつも一気に読みきってしまいました。

でも・・。

鍵人の最愛の女性、美津子の遭遇したあまりに悲惨で残酷な体験に、胸が抉られるような痛みを感じました。

とんどの女性がそうでしょうが、私はこの手の性暴力が死ぬほど嫌いです。

まして子どもの頃にいたずらをされたおぞましい記憶のある、潔癖な美津子の受けた傷は、死よりも酷い、
安易な想像を絶するものだったはずです。

首謀者である「あの男」は無論ですが、私は共犯の男達が上巻で伽耶に対してはいたって紳士だったり、気のいい男であるのが、むしろ私はかえって腹立たしかった。
たとえ彼らが年を経て変わってきたにせよ、やはりあの事件での彼らの所業は許せないです。


彼らは「ある復讐者」によって順に殺害されるのですが、首謀者の男があっけなく爆死するのも納得いかなかったです。

いかに惨い死に様といえど、死は誰にもいずれ訪れるものであり、現世の苦しみからの解放であり、永遠の安息ではないでしょうか。

美津子が穏やかな死によって、全ての苦しみから逃れられたように。


あんな悪人は、醜く生きればいいのです。

伽耶がしようとしたように、30年近く前の彼らの悪事を明るみに出すことで、全ての権威を失い、世の人々の軽蔑の視線を受けながら、地を這うように醜く生きればいいのです。

共犯の男達も同様に。

いかに美津子を愛していたにしても、その感情が捩れていったにしても、妙な薬を打たれていたとしても、ひどく後悔していたにしても、彼ら共犯者のしたことは到底許されるものではありません。

あの事件の後、美津子がどれほどの苦しみを背負いながら生きてきたのかを想像すると、心が痛みます。

死よりも、時に生きぬくことのほうがはるかに辛いことだと思うから。

後からふと思ったのですが、この美津子の悲劇、以前世間を騒がした早稲田大学のレイプサークル、「スーパーフリー事件」を元にしているのかもしれませんね。
あれもニュースを見ているだけで辛くなるほど、酷い事件でした。


閑話休題。

主人公の伽耶は、中山作品によくあるようにレズビアンですが、ひとつの恋に一途ではなく、割とあっさりと天才ピアニスト、安藤アンナと恋に落ちてしまいます。
この点ちょっと拍子抜けしました。

伽耶はまるで狂言回しのような存在です。私は彼女自体にはあまり魅力を感じませんでした。


本作でもっとも際立って魅力的だったのは、鍵人の父の鳥海武です。

破天荒で全く身勝手で、女好きの男ですが、どんな女性でも美点を見つけて愛する才能を持つ男です。

ボロボロのアップライトでも名だたる名機でも、ピアノなら何でも愛するように。

決してほめられた人間ではないのですが、女性への愛を表現する、という点で、鳥海武と共犯の男達とでは、まるで雲泥の差です。

彼と子供の鍵人が、ケッヘル番号に従って、西へ西へと旅する章は、本当に面白かった。

下巻を読み返すのは辛いけれど、上巻の鳥海武親子の流転の旅の箇所は、何度でも読み返したいです。

鳥海武は、本作のみならず私が今まで読んだ中山作品で、もっとも魅力的な男性登場人物でした。



でも他にも、すし屋のあゆみちゃんとか、美津子の父親とか、無愛想なよし子ちゃんとか、コオロギさんとか、アロイジアとか、もっと掘り下げて欲しい、気になる人物が沢山いました。

そして何より蟹沢くん。
あなた一体何者だったの?


決して退屈はしませんでしたが、下巻は辻褄の合わないところも見られ、消化不良ぎみでした。

ちょっと風呂敷を広げすぎかなあ。

美津子の悲劇の衝撃が読み終えてもなかなか去らず、正直全てを読み終えてから哀しい気持ちが心に残る物語でした。

ケッヘル〈上〉 (文春文庫)ケッヘル〈上〉 (文春文庫)
(2009/05/08)
中山 可穂

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