三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

死者の記憶を見る。

人は、自分の過去の記憶を、脳の中で知らず知らずのうちに編集しているといいいます。
以前深夜に放送されていたテレビで観たのですが、40歳以上の男女に、自分の記憶に残っている10才ぐらいまでの出来事を書き出してもらい、それを「楽しかったこと」、「悲しかったこと」「そのどちらでもないこと」に大まかに分類してもらう、そうすると、ほとんどが5:3:1の比率になるんだそうです。
これはまあ、大雑把な話ですが。

芥川龍之介の「藪の中」は、ある一つの事件に対する、当事者たちの状況説明や言い分が皆食い違っていて、事実が曖昧に(藪の中に)なってしまう話ですが、これなどはまさに皆が「自分は悪くない」という方向に、記憶を編集していった結果の産物ではないかと、私は思うのです。

身近な話では、昔自分が好意を持っていた、カッコ良かったはずの少年が、今当時の写真を見てみると、どうと言うことのない平凡な人だったりしたことは、ありませんか・・?
人は自分が好感を持っていたものは、頭の中で美化しているのです。

清水玲子の「記憶」は、「死者の記憶を読む」ことをテーマにした連作です。
一作目の「秘密1999」では、アメリカ大統領(未来の設定ですから、架空の人物です)が、突然何者かに暗殺されてしまう場面から始まります。
怪しい人物を見たものは誰もいません。また大統領は清廉潔白な聖職者のような人物で、恨みをかわれるようなことは何一つ思い当たりません。
真実を知っているのは、死んだ大統領、ただ一人。。

警察はMRIスキャナーを使って、死んだ大統領の脳に残された「記憶」の映像を見ることで、犯人を見つけ出そうとします。
日常の行動の記憶のみならず、大統領のプライベートな記憶、入浴中、トイレの中・・での記憶まで衆人の目にさらされてしまいます。

大統領の、記憶に残る映像は・・、娘は実物以上に可愛くあどけなく映り(これは世のお父さん方は皆そうかもしれませんね)、周囲の人たちも実際よりも善良そうに映っていて、まさに聖人のようだという大統領の人柄を裏付けるものでした。

けれど、・・・とうとう、大統領が、命を懸けてまで隠し通したかった秘密が、暴かれてしまうのです。

人に記憶を覗かれるのは・・、怖いです。
大統領が本当に気の毒。。
誰にでも心に隠し持っておきたい秘密の一つや二つ、あるだろうに。。。

現在「秘密」は4作発表されており、これはその第一作目です。
続けて、続編の話を取り上げたいと思います。
秘密―トップ・シークレット (1) 秘密―トップ・シークレット (1)
清水 玲子 (2001/12)
白泉社

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