三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

スタンドアップ

暴力亭主から2人の子供を連れて逃れ、故郷に帰った主人公、ジョージー。

彼女は二人の子供を養うために、男の職場であった鉱山に職を求める。

そこで待っていたのは、女が職場に踏み込んでくることを毛嫌いする鉱山の男達の、酷い嫌がらせや暴行だった。


会社側に訴えても、「嫌なら辞めればいい」と冷たく突き放される。

生活のため、子供達のため、泣かされつつも始めは耐えていたジョージーだったが、男達の魔手が子供にまで伸び、自分にも耐え難い「ある事件」起こる。

とうとう、彼女は会社を訴えるために、ただ一人、立ち上がる。。




差別は、場所を変え、形を変え、そしてその程度は違えども、どんなところにもあると思います。

男女は無論、肌の色、出自、学歴、等等。。

自分と同じ部類の人間だけとつるむのは、気楽です。

そして自分と違う人種は、時に疎ましい。


だから、男の楽園?だった鉱山に、女が踏み込んできたことへの、男達の当惑や、不愉快さは分かります。


しかし、ジョージーたちの受けた嫌がらせは、もはやセクハラなどという生易しいものではありません。

卑猥な言葉やボディタッチは序の口。更衣室に忍び込んでお弁当に大人のおもちゃを入れる。

服に精液を付ける。女性が簡易トイレに入っているときに、トイレを横倒しにして糞尿まみれにする。

わざと危険な場所に追い込んで、レイプしようとする。


多少の映画的誇張はあるのでしょうが、観ていて苦しくなるほど陰湿です。


そんな境遇にあっても、ジョージーたち女性は仕事が必要なのです。

大人しく夫の庇護の下に家で家事をして、何も考えずに安穏に暮らせるような幸福な女なら、鉱山でなぞ働くはずはない。

皆それぞれ事情がある。

幼い子供を育てなければいけなかったり、病気の母親を抱えていたり、家族の生活を担っているのです。

劣悪な環境の下でも、迫害されても、石に噛り付いても彼女達は働かなくてはならない。

ジョージーが初めて得た給料で、子供達に外食をさせ、プレゼントをあげるシーンがあるのですが、彼女の目が母親としての喜びに潤んでいて、こちらもじんわりしました。


家族のために働くことは、本来尊いのです。


ジョージーの受けた嫌がらせは、男女差別、セクハラと言うより、弱者苛めなのでしょう。

女が邪魔というだけで、いくらミソジニーだったとしても、ここまであからさまな嫌がらせはしないでしょう。



良識ある男なら、客観的に自分を見ることが出来る。

たとえ女を疎ましいと思っていても、こんな真似は恥ずかしくて出来ないでしょう。


圧倒的多数のものが、数を頼みに、立場の弱いものを虐げる。苛めを楽しむ。


幼稚な人間の、邪悪な娯楽です。


この映画を観ていると、あまりの男の嫌らしさに辟易しますが、果たして本当にこんな幼稚な人間が、それも大勢いるのかどうか。


あと、この映画が素晴らしいところは、ジョージーとその親友のグローリーの対比。

難病に冒され、命の灯火を細らせていくグローリーは、はじめジョージーの行動に逃げ腰ですが、最後の最後に感動的な決断をしてくれます。

グローリーもジョージーと同じく鉱山で働く女だけれど、彼女は男たちから一目置かれています。

セクハラ発言をさらっと受け流し、時には言い返し、仕事も出来る。誇り高い。

そして子供はないけれど、誠実な夫と温かい家庭を築いている。



それに対して、ジョージーは、こう言っては酷ですが、とにかく男を見る目がない。

高校時代のボーイフレンドはアレだし(この男が全ての元凶なのです)、その後結婚した男は暴力亭主。


男達に卑猥な言葉にはじめは激しく傷ついて、泣く。。


ジョージーは、どうしようもなく追い込まれて、「スタンドアップ」しました。

それは十分に共感するし、感動もしました。

でもそこまで追い込まれるまでに、何か手はなかったのでしょうか?

彼女は耐えて耐えて耐えて、弱い者苛めの好きな連中の毒牙にかかり、ここまでの窮状に陥りました。

耐える前に、何か手はなかったのでしょうか?


親友グローリーの誇り高い生き方を見ていると、そうも考えてしまうのです。

男達に誇りがあれば、つまらぬ嫌がらせはしないだろう。

ジョージーが初めから誇り高くあれば、人を見る目があれば、ここまで追い込まれはしなかっただろう、と。

ジョージー役のシャーリーズ・セロンよりも、グローリー役のフランシス・マクドーマンド(ファーゴの女刑事!)、その夫役のショーン・ビーンが印象に残った映画でした。

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シャーリーズ・セロン (2006/06/02)
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