三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

鱗姫 嶽本野ばら

図書館で本を借りる時は、出来るだけ読んだことの無い作家さんの作品を選ぶようにしています。

もちろんこれは私には無理だなあ、受け付けないなあ、と思う本も多いのですが、自分の好みの作品に当たった時の喜びは大きいです。


嶽本野ばらさん。

映画「下妻物語」の原作者という程度しか、私は知りませんでした。
「下妻物語」は大好きな映画だったので、何の予備知識も無くこの本を手に取りました。

京都の名門、龍烏家の長女・楼子は、奇跡的に美しい肌と美貌を誇っていた。一年中日傘を手放さず、人一倍美肌に固執していた楼子には、しかし重大な秘密があった。初潮をむかえた十一の歳、性器の周囲に生えはじめた鱗が、歳月とともに範囲を拡げていたのである。楼子の様子に不審を抱いた叔母の黎子は、ある日、自分にも同じ鱗があること、それが龍烏家の女子に伝わる奇病であることを明かす。忌まわしき「鱗病」を伝える龍烏家の秘密とは? 全身へと拡がる鱗の恐怖と、美貌を失い、最愛の兄が離れてゆく絶望に脅える楼子は鱗病を抑える唯一の治療法を見つけるが、それはあまりにも凄惨な方法だった! 人の執念の悲しさを前代未聞の設定で描いた、ファン待望の第二作。

(アマゾンの紹介文より)

何ともシュールなお話です。
はじめはカフカの「変身」を連想したのですが、元々誇り高き絶世の美女である楼子もその叔母も、決してグレゴール・ザムザのような哀しい運命は辿りません。


美しさこそ全てであった誇り高い主人公の叔母、黎子が鱗病の閉鎖病棟で、主人公に語りかける場面は、とても印象的でした。

(引用はじめ)

私は世界の有象無象の中から、美しいものだけを選択し、大切にし、今まで生きてきた。
だから、皆、私達を嫌悪すればいいのだわ。先ずは差別すればいい。
醜悪なものを醜悪なものとして、差別すればいい。それが内面に関することでも外面に関することでも、どちらでも同じこと。美しいものを美しいと素直に感じるように、醜いものを素直に醜いと感じればいい。

 現代を私が嫌悪し続けるのはね、醜いものを醜いという感覚を拘束し、体面で糊塗することが人間らしさだとされる時代だからなの。

(中略)
醜悪なものを現代のヒューマニズムは、醜悪だといわない。醜悪なものを醜悪だということはヒューマニズムに反することだとされる。悪だとされる。
現代のヒューマニズムにおける正義は、醜悪なもの、異形なものに一見、優しい。

でも優しさなんて何の役にも立ちはしない。理解できないものを理解しなければいけない時、人間は苦肉の策として優しさを持ち出すのよ。真に理解していれば、相手を認めていれば人は人に優しくなんてなくていい。残酷でいられる筈なのよ。

安易な理性によって私達にヒューマニズムが与えるものは同情のみ。同情なんていらないわ。

同情するくらいならきっぱりと差別してくれればいいのよ。差別をされたものは差別をされたものとしてのアイデンティティを築くことが出来る。

(引用終わり)

この魅力的な叔母様の独白。
自分の心に長く刻んでおきたくて、ここに長々と書き出してしまいました。


底に隠された悪意や嫌悪感を、見せ掛けだけの優しさでオブラートする現代の偽善を、ここまで容赦なく切り捨てる作者の筆力には舌を巻きます。

そして叔母様の徹底した誇り高さに憧れます。

「鱗姫」のお話の顛末自体は、そう意外性はなかったのですが、この叔母様黎子の存在がとにかく際立っていました。


この本の次に、「シシリエンヌ」を読んだのですが、こちらはかなり官能的な作品でした


でも、たとえ異形なものとなっても、人の同情は受けず、常に誇り高く、というテーマは、この作品にも通じていました。

しかし、嶽本野ばらさん。

著者近影を拝見しましたが、男の方なのか女の方なのか、全然分かりません

でもとても綺麗な方ですね。

鱗姫―uloco hime鱗姫―uloco hime
(2001/03)
嶽本 野ばら

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336:

引き込まれ、続きが物凄く気になり、一気に読んでしまいました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

2010.10.23 04:19 藍色 #- URL[EDIT]
337:藍色さま

いつもトラックバックをありがとうございます。
嶽本野ばらさんの小説は、独特の世界観が新鮮ですね。

こちらからもトラックバックをさせていただきましたが、ちゃんと送信できていたでしょうかv-356

2010.10.24 14:45 明石 #- URL[EDIT]

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