三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

「芋虫」 江戸川乱歩

あらすじ (※ご注意 物語の結末を書いています)


時子の夫は、奇跡的に命が助かった元軍人。両手両足を失い、聞くことも話すこともできず、風呂敷包みから傷痕だらけの顔だけ出したようないでたちだ。
外では献身的な妻を演じながら、時子は夫を“無力な生きもの”として扱い、弄んでいた。
ある夜、夫を見ているうちに、時子は鬱屈した感情を爆発させ、夫が僅かに持ちうる外部との接続器官である眼を潰してしまう。悶え苦しむ夫を見て彼女は自分の過ちを悔い、夫の身体に「ユルシテ」と指で書いて謝罪する。
間もなく、須永中尉は失踪する。時子は大家である鷲尾少将と共に夫を捜し、「ユルス」との走り書きを発見する。その後、庭を捜索していた彼女たちは、庭に口を開けていた古井戸に何かが落ちた音を聞いたのだった…。


映画「キャタピラー」はこの小説に着想を得て作られたといいます。
映画は観ていませんが、小説に似通っているのは主人公2人の設定のみで、時代もまるで違う反戦映画になっているようですね。
(映画は第二次世界大戦中となっていますが、この小説が発表されたのは昭和4年です)


小説では時子の夫がどのような兵士であったかは、語られていません。
ただ、酷い重傷を負ったにもかかわらず、生きていたということのみで。

「良き妻であれ」との、周囲の人間から受ける無責任なプレッシャーに押しつぶされそうな時子は、人の訪れることのない家の2階の六畳間で、生ける肉独楽となった夫(食欲と性欲だけの存在)の介護に明け暮れ、次第に自分の内なる残虐さ、嗜虐性に目覚めていきます。

所々に・・・・・・、と文章が伏せてある箇所があり、大変に気になります。
・・・・・・、の部分はあまりに過激な文章だから伏せられたのでしょうか。


しかしこれは、ただエログロなだけではなく、歪んだ愛情を描いた小説だと私は思いました。

特に心に残るのは、終盤のこの文章です。


(引用はじめ)

時子はさっきまで不具者の寝ていた枕下の柱を見つめていった。
「ユルス」
時子はそれを「許す」と読み得た時、ハッと凡ての事情がわかってしまった様に思った。
(中略)
あれは彼女が先に不具者の胸に「ユルシテ」と書いた言葉の返事に相違ない。
彼は「私は死ぬ。けれど、お前の行為に立腹してではないのだよ。安心おし。」と云っているのだ。
この寛大さが一層彼女の胸を痛くした。

(引用終わり)


手足のない夫はおそらく口で筆を咥えて、彼に対して酷い仕打ちをしてきた妻に対して「ユルス」というメッセージを残し、死を選択します。

妻に対して、彼を空虚な名のみの英雄にした無責任な世界に対して、言いたい事は山ほどあったでしょう。

表に決して出すことの出来ない感情をおさえ、ただ一言「ユルス」と。


キワモノと思うなかれ。

これは名作だと私は思います。

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(2008/07/25)
江戸川 乱歩

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311:「キャタピラー」が何かの

映画祭に出品するとかでTVで取り上げられてるのを見たことがあります。
ショッキングな内容でしたね・・。
乱歩作品に触発されていたとは。
「ユルス」の件がなければ只のバケモノ風な作品になってたかも。

大昔。
『ジョニーは戦場へ行った』(映画)を観ました。
数日間、人間の尊厳とは?と気分がふさいでしまったのを覚えています。
見た目が異形のものになろうとも精神は堕ちていなかった。
逆に正常と映る妻の精神が崩壊していく。。
そんな恐怖を感じます。

読みたいけど長い?←長編が苦手^^;

2010.09.10 09:43 ゴエ #8iCOsRG2 URL[EDIT]
313:寺島しのぶ

「キャタピラー」は確かベルリン映画祭で上映されて、ヒロイン役の寺島しのぶが主演女優賞を撮ったんでしたね。
映画のほうを観た方のレビューを見てみると、皆さん寺島さんの体当たり演技は褒めていらっしゃるものの、映画自体はいまいち・・という意見が多いようですv-356

前評判が高すぎると、どうしても辛口になっちゃうんでしょうか・・?

原作は夫婦の歪んだ愛情や憎しみといった極めて狭い世界を描いたものなので、あれを反戦メッセージ色の強い物語に仕立てられていると聞くと、どうも私も食指が動きません

> 大昔。
> 『ジョニーは戦場へ行った』(映画)を観ました。
> 数日間、人間の尊厳とは?と気分がふさいでしまったのを覚えています。
> 見た目が異形のものになろうとも精神は堕ちていなかった。
> 逆に正常と映る妻の精神が崩壊していく。。
> そんな恐怖を感じます。

この映画はタイトルを聞いたことがある程度でした。
観てみたいです。


「芋虫」は短編なので、あっという間に読めますよ~。
角川文庫の「芋虫」は短編集なのですが、収録作品の中には「芋虫」以上にグロテスクなのもありました。。
はっきりと好みの別れるところだろうと思われます。
こういうエログロを生理的に受け付けない方もいるかも。

でもきっと、ゴエさまは大丈夫かとv-398
え、ダメ・・??

2010.09.13 23:33 明石 #- URL[EDIT]
314:ほほう~^^

「芋虫」以上のモノがあるのですね。
ええ!全然、大丈夫♪
読んだ(観た)あと、気分が下がるくせに知りたがるw
乱歩は小学校の教室後ろにあった『学級図書』以来かも^皿^
>ベルリン映画祭
そそ!受賞のようすをTVで見たんでした。
寺島さんって何でも体当たり演技の人?これ以前も何かの映画に体当たりしてたような・・・。
“何か”が多くてすみません・・・m(_ _)m

2010.09.14 08:40 ゴエ #8iCOsRG2 URL[EDIT]
316:私も

江戸川乱歩は子供の頃読んだ何とか探偵団もの、以来でしたv-398
エログロ系作品もあることは知っていたけれど、どうも手が出なかったですよ、怖くて。

あ、でも20年ぐらい前、「RANPO」とかいう竹中直人主演の、妙~な映画を観たことが。。

寺島しのぶさんは、決して美人女優ではありませんが(失礼!!)、演技の幅の広い方ですね。
気前良く??裸にもなるし。
ちょいと血迷ってv-356彼女の出ていた「愛の流刑地」という不思議な映画をDVDで観た事がありますが、そこでも惜しげもなく綺麗な身体を披露されていたような。

綺麗なだけの女優さんはいつの間にか名前を見かけなくなるけれど、寺島さんはきっと20年後も女優を続けていそうな気がします。

2010.09.15 01:24 明石 #- URL[EDIT]
318:管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2010.09.15 17:53 # [EDIT]
319:ゴエ様♪

執拗だなんてとんでもないです~。
いつもコメントをありがとうございます。

> トヨエツが出てるアレでしょうか?

そうですそうです。
なんといっても原作が行為至上主義の渡辺淳一大先生。
お子様はご遠慮くださいなシーンが多いですが、話の内容は原作も映画も・・・・ですv-356
話のネタにはなりますが~。

レンタルでご覧になるなら正規料金で借りるより、ポイントとかサービス券のあるときに借りたほうがいいかも。v-355

松たか子さんといい、梨園の女は凄いですね。
恵まれた環境でもあるのでしょうが、運や才能に加えて、肝も据わってそうな気がします。

2010.09.17 02:05 明石 #- URL[EDIT]

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