三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

「聖母の深き淵」 柴田よしき

あらすじ
一児の母となった村上緑子は下町の所轄署に異動になり、穏やかに刑事生活を続けていた。その彼女の前に、男の体と女の心を持つ美人が現れる。彼女は失踪した親友の捜索を緑子に頼むのだった。そんな時、緑子は四年前に起きた未解決の乳児誘拐事件の話をきく。そして、所轄の廃工場からは主婦の惨殺死体が…。保母失踪、乳児誘拐、主婦惨殺。互いに関連が見えない事件たち、だが、そこには恐るべき一つの真実が隠されていた…。ジェンダーと母性の神話に鋭く切り込む新警察小説、第二弾。


柴田よしきのデビュー作「女神の永遠」の続編です。

前作ではかなり特異なキャラクター(でも好き)だった緑子が、一児の母(未婚)となり、静かな幸福を得たためか、やや穏やかなひとになっています。
しかし、その分リアリティーがあります。
前作で極端な行動を取りがちだった高須ほかの脇役も、同様にリアリティーがあります。

それがこの残酷かつ凄惨な物語に現実味を持たせ、息づかせていると感じました。

そして、何をえらそうに、と思われるかもしれないのですが、巧くなられたなあと思いました。

冒頭の、覚醒剤容疑者の女の赤ちゃんに、緑子が我が子を思い出しながら乳を上げる場面から、現在の緑子の境遇や心境の変化が手に取るように理解できて、物語に引き込まれます。

序盤で緑子が辰巳の下町商店街を満たされた気持ちで歩くところ、物語の本筋に全然関係ないけれども好きです。
前作での修羅や緑子の苦しみを思い起こすと・・、感無量で。
もちろんそのままでは話が進まないのですが(汗)。

4年前の乳児誘拐、保母失踪、主婦惨殺、主婦売春、等の雑多な事件、ばらばらのピースが、見事に一つの結末へと収束していきます。

そして、前作では緑子に伍するような魅力的な男が出てこないとぼやきましたが、今作では強烈な個性を放つ男が登場します、二人も。

元刑事の私立探偵麻生龍太郎と、インテリヤクザの山内練。

特に山内練。

悪い奴なのに、どうしてそんなに魅力的なのか。


最も印象深いのは、終盤でリコが山内に向けて放った言葉です。


失うものが何もない者より、守るべきものがある者の方が強い。

何故なら愛するもののために、絶対に勝たなくてはいけないから。


全くその通り。
凄いよ、リコ。

掛け値なしに面白い作品です。

聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)
(1998/03)
柴田 よしき

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