三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

「溺れる人」を称える。

3月に放映された篠原涼子さん主演のドラマ、「溺れる人」がとても良かったので、原作の藤崎麻里「溺れる人」も買ってみました。
でも原作は短編だったんですね。一般人からドキュメンタリー作品を公募した「ウーマンズ・ビート賞」というものの大賞入選作品だったそうで、単行本には他の4本の入選作品も併録されているんです。

「溺れる人」、原作も良かったです。
他の入選作品とは比べるべくもない。群を抜いています。

何故なら、他の作品は、概ね「自分賛歌」なんです。
確かに波乱万丈の人生を送っていたり、凡人には出来ないことにトライしていて、「記録」としては面白いのかもしれませんが、「読み物」としてはあまりにキレイゴト過ぎています。
自分の内面や周囲の醜い面、あるいは苦しみから、故意に目をそむけているようにも思えます。
無理もないかもしれません。だって一般人の、「普通の人」の書いたドキュメンタリーなんですから。
書きにくいことも多いのでしょう。
それはこの手の素人作品の限界かもしれません。。

しかし、それでは読み物作品として面白くないのです。

藤崎麻里さんの「溺れる人」は、他の作品とは大きく趣を異にしています。

何不自由なく育ったはずの女性が、アルコール中毒に陥る。
飲み会でもただ一人、ものすごいピッチで飲むようになる。前後不覚になり、しまいに意識をなくす(ブラックアウトというらしい)。汚物にまみれたトイレで目覚める。
酒をやめようと決意しても、手に震えが来る。幻覚を見る。
そしてまた酒に手を伸ばし、以前よりもいっそう酒量が増える。
あげくに、酔っ払って車を運転するようにまでなる(ドラマでは省かれてましたね、やっぱり)。

これでもか、というほど、主人公の醜態が描かれ、彼女の苦しさと自己嫌悪が、読み手にも痛いほど伝わってくる。
この人は、自分の醜さから目をそむけていないのです。

他の4作品は自己肯定、「溺れる人」は懺悔の記録だという感想を書いていらっしゃる方がおられましたが、まさにその通りだと思います。

読み手として、どちらの作品が心に残るかといえば、答えは明らかです。

もし、「溺れる人」が、「私はこんなに努力して、アル中を克服しました」のような、前向き(?)な、自己讃美の作品だったら、他の入選作と同じように、つまらないものになったかもしれません。

自分を賛美しなかった、藤崎麻里さんを称えたいです。
溺れる人―第3回Woman’s Beat大賞受賞作品集 溺れる人―第3回Woman’s Beat大賞受賞作品集
藤崎 麻里、高橋 和子 他 (2005/02)
中央公論新社

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