三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

沖で待つ

芥川賞受賞作の「沖で待つ」を読みました。

著者は絲山秋子(いとやまあきこ)さん。

芥川賞の候補に挙がるのは、これで4度目。
直木賞にも一度候補に挙がったことがあるのだそうです。

直木賞の東野圭吾さんといい、今回は、苦労人(?)の受賞ですね。


「しょっぱいドライブ」といい、「鍋の中」といい、

純文学をいまいち解さない私には、芥川賞は、「だからどうした?」といいたくなる内容が多いです。

でもこの作品は、さらりと、喉越しよく読めました。小品だけど、佳作だと思います。


住宅設備機器メーカーに勤める主人公と、その同期の男、「太っちゃん」との、愛ではない男と女の関係。。

友情というほど薄くはなく、恋愛というほど濃くはない、「同期」の男女のつながり。

男性と肩を並べて、かといって気負わず、仕事をしている女性には、共感できる面が多いのではないでしょうか。


白状すると私は「仕事の出来ない女」で、就職も上手くいかなかったり、職を転々としたりと、限りなく社会生活不適応者に近い人間なんですが(汗)。

そんな私でも、「仕事をする」っていいな、「同期の仲間」っていいな、と思わせてくれます。


太っちゃんは、突然の事故で死に(序盤で分かるので、この程度のネタバレはお許しを)、主人公は生前からの約束どおり、太っちゃんのパソコンのハードディスクを壊しに行きます。

そこには、太っちゃんの愛妻にも見せられない、もろもろの秘密があるからです。

太っちゃんは主人公なら、約束を守り、パソコンの中身を覗くこともなく、ハードディスクを壊してくれるだろうと、信頼しているのです。

太っちゃんの死の直後、約束どおりに、彼のアパートに忍び込み、動揺しつつもディスクを壊そうとする場面は、緊迫感溢れる描写で、読んでいてドキドキしました。

誰にでも覗かれたくない秘密がある。でもその秘密を託すことの出来る、信頼できる仲間。

太っちゃんには、それが同期の女の、主人公だったんですね。

人の死ぬ話なのに、読んだ後、こころがほっこりと温かくなりました。

この作者の別の作品も、読んでみたいと思いました。
沖で待つ 沖で待つ
絲山 秋子 (2006/02/23)
文藝春秋

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