三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

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「整形美女」姫野カオルコ

少女漫画家みたいなペンネームだなあ、と、横目で見つつも、一度も読んだことがなかった姫野カオルコさん。
たびたび直木賞候補作に名前が挙がるのが気になっていたので、先日初めて著作を読んでみました。

「整形美女」というタイトルから、私は高校生の頃読んだプリニエの「醜女の日記」を連想していました。

ぶすだけれども知的な主人公が美女に整形して、これで恋人にも愛されると思っていたら、彼女の個性的な陰影を愛していた恋人にかえって冷たくされ、絶望して電車に飛び込む。
せっかくの美しい彼女の顔はめちゃめちゃになってしまった。・・という悲しい話です。

整形をテーマにした小説だと、こうした予定調和された筋を想像してしまいます。
「作り物の顔なんて無意味」「ぶすでも自然が一番」のような。


ところが姫野カオルコさん。

のっけから驚かせてくれます。

主人公の一人、甲斐子は、「奇跡のような」美女。

彼女は、医師にこう言います。
「目を豆粒のように小さく、鼻は低く、バストは小さく、ウェストは太くして」。

それが彼女の言う、「美しい女」。

甲斐子は「美しいことと、異性に美しく思われることは違う」というのです。

完璧な美女は、ほかを照らすライトのようなもの。
異性はそのライトに照らされた、十人並みの女に目が行くようになる。

完璧な美女はパーティーの料理の真ん中に、華々しく飾られたロブスターのようなもの。
男はその周りにあるカレーや蕎麦やハムやテリーヌ、に群がり、哀れロブスターは乾燥して食べるシロモノではなくなっていく。

たまに阿呆な男がナイフとフォークを手に、ロブスターと格闘するも、盛り付けだけを汚し、ますますロブスターは立派な男から見向きもされなくなっている。。

これが甲斐子にとっての「美女の実像」だというのです。


確かに、あまりにも美しいと、異性は近寄りがたいかもしれない。

「美人よりもカワイイ子」がいい、と言いますし。

十人並みの容姿で、あまり賢すぎない女のほうが、モテるのかもしれない。

しかし、これを、甲斐子は「計画的に」やり遂げようとするのです。



もう一人の主人公、安部子は、もともと十人並みの容姿。

彼女は「整形前の甲斐子のように」、整形してしまいます。

(本当に)美しく変貌した彼女は、しかし、新たな恐怖を抱えることになります。

鼻のシリコンがずれてはいまいか。そして周囲に整形を隠すことの心苦しさ。


ところどころ、文章が哲学的というか回りくどいと言うか、読みにくいなと感じた箇所もあるのですが、
作品の随所に散りばめられた、鋭く的確かつ軽妙な言葉に驚かされました。

・「変わっている」は語彙の乏しい者が発する拒絶の言葉である。

・(甲斐子のいう、美人になるためには)
とにかく多数派の徹底模倣。
個性など無益である。個性など異端視されるもと。
個性を叫ぶ若者の多数は、髪を緑色に染めて油で逆立てても、ちょんまげは結わない。
電気ギターを弾いて歌うが、三味線で反抗の都都逸を作りはしない。

・(美女に変身した安部子の言葉)
それを隠したときから、整形は不倫になるのです。
整形は、整形の行為自体よりも、隠すというところに、人々は不正と狡猾を嗅ぎ付けるのです。
気になって仕方がなかったという低い鼻に、隆鼻術をしたと答えたジャネット・ジャクソンが前向きであると人々に嘲笑されることなく迎えられ、かたやその兄の歌手へは病人を見る様なまなざしが向けられるのは、兄が漂白手術をした皮膚を、色素の突然変異だと答えているからです。
隠すという不倫を超えて、元々白かったと信じているとすれば、もはや病気です。

などなど。枚挙に暇なし、です。


もう一つ、本作品を読んで驚いたのは・・、美容整形業界の悪辣さ!

安部子の鼻にサッカーボールが当たって、シリコンが飛び出るシーンは怖かったです。

それを「あなたの不注意でしょ」と、治療をたらいまわしにする美容外科も怖かったです。。

他にも、美容外科界の怖ろしい話が書かれていました(汗)。
ここに書かれていることは、本当なのでしょうか?
参考文献に「美容外科整形の内幕」という本が挙げられているから、やはり本当のことなのかな。

怖ろしい。
私は絶対、整形はすまい、と思いましたよ。


甲斐子の持論も、分からないではないです。

美しすぎず、お手軽そうな(に見える)女のほうが、おそらく人気があるのでしょうし、甲斐子の目指す「美女」がそのような女だというなら、十人並みに整形して、バカっぽい振りをした甲斐子は、まさに目的を果たしたのでしょう。
事実、その後甲斐子は、異性に人気が出るようになる・・のです。

しかし、それって、幸福か?

売れ残ったロブスターでも良い。
私は「奇跡のような美女」になりたかったわ。
長い足、くびれたウェストが欲しかったわ。

整形しようとまでは思わないけど。
整形美女 整形美女
姫野 カオルコ (2002/09)
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