三毛犬ジョニーへの伝言

旧「自堕落な蟻」 ブログ名変えました。ジョニーは昔飼っていた可愛いビーグルの名前です。

「手紙」東野圭吾

もう数年前のことになりますが、近所で幼い女の子が殺されるという、悲惨な事件がありました。

当時は毎日のようにテレビで報道され、公園にもワイドショーのスタッフが張り付いていたりして、かなり騒々しかったのを覚えています。

その後、私はこんな噂を息子の同級生のお母さんから、聞いたのです。

「加害者の子供が○○小学校に入学するというので、その小学校に入学する予定だった子供の父兄が動揺している」というのです。

そのとき私は、哀れな加害者の子供達に同情しました。

悪いのはその母親なのに、なぜその子供たちまで白眼視されなければいけないのか、と。

でも、私はもしその子たちが、息子とおなじ学校に通い、あまつさえ友達になり、親しくうちに遊びに来るようにもなったら・・、果たして自然に振舞うことが出来るのだろうか、とも今になれば思うのです。


「手紙」

親を亡くし、たった二人だけになってしまった兄弟。

兄は弟の大学費用を手に入れるために、資産家の老婦人の家に忍び入り、強盗殺人事件を起こしてしまう。

兄は15年の実刑判決を受ける。

塀の中の人となった兄は、ただ一人の肉親の弟に、毎月毎月、手紙を出す。

それを心の拠り所にしている。

だが、残された弟には「殺人犯の弟」として、世間の容赦ない白眼視を浴びることになる。

アパートは追い出され、友人は離れ、就職、恋人、バンド・・弟の手に入るかと思われた小さな幸福の数々が、全て「殺人犯の弟」であることから、彼の手をすり抜けていく。


誰も、表だって弟、直貴を侮蔑したりはしない。
直貴には罪はない、そのことは誰も分かっている。

だが、正直皆、「かかわりたくない」のだ。
自分達の穏やかな生活に、波風を立てられたくないのだ。

作中に出てくる、善良な人々(高校教師や、エスニックレストランの店主)は、直貴に同情しつつも、「自分ではない誰か」が、彼の力になってくれないかと思っている。


就職先の社長は言う。

「差別はね、なくならないんだよ。
われわれは君の事を差別しなきゃならないんだ。
自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる、全ての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」



この人の言葉は、冷酷だけれど的を射ていたかもしれないです。。


「手紙」は、ミステリーとは違い、重かったです。

東野さんは問題提起はしても、答えを出さず、話を締めくくっています。

安易なオチなど、つけないところが、またいいです。


「泣ける」「号泣した」という評判を聞いていたので、ヒネクレ者の私は「泣かないぞ」と思いつつも・・、終盤、慰問コンサートで兄弟が再会するシーンでは、やはり涙が出ました。


直貴には、それでも、由美子という理解者、寺尾という心優しい親友、社長という助言者がいました。


あの犯人の子供達も、思い十字架を背負って成長しなければならないのかもしれない。

せめて由美子や寺尾のような、良き配偶者、良き友人に恵まれますように。
手紙 手紙
東野 圭吾 (2003/03)
毎日新聞社

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